工場・倉庫の開発行為とは
開発行為とは
工場や倉庫を建築する際、計画地が「農地」だった場合、「開発行為」をする必要があります。開発行為とは、「農地を農地以外のもの」にすることをいいます。
登記謄本の地目に田や畑と記載されている場合、その土地は農地のため、開発行為が必要になります。そのため、工場・倉庫の建築計画を進める際は事前に農地か確認してください。
無断転用を行った場合、行政による原状回復処分がされる上に懲役や罰金が科されることもあります。工場・倉庫の計画地が農地だった場合は正式な手続きを行った上で建築計画を進めてください。
やまと建築事務所は開発行為から工場・倉庫の設計・監理業務に対応可能です。工場・倉庫の建築計画がある方はまずはお問い合わせください。
農地の種類
開発行為を実施するために必要な手順は、当該農地が都市計画や農業振興地域整備計画においてどのように位置づけられているかによって異なるため、この2つを確認しておく必要があります。
開発行為の前に必要な手続の違いによって分類すると、「市街化区域内の一般の農地」「生産緑地」「市街化区域外の一般の農地」「市街化区域外の農振地域の農地」の4つに分けることができます。
農地の種類 | 概要 |
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市街化区域内の一般の農地 | 農地が市街化区域内にあり、生産緑地に指定されていない場合は農地を転用する際に許可は必要ありません。ただし、転用の前に農業委員会への届出をする必要があります。 |
生産緑地 | 当該農地が生産緑地に指定されている場合には、転用はもちろん売却・賃貸も原則としてできません。そのため、自ら耕作する、市民農園にする以外の方法で農地を活用するためには、生産緑地としての行為制限が解除される必要があります。 |
市街化区域外の一般の農地 | 市街化区域の外にある農地を転用するには、都道府県知事等の許可を受ける必要があります。農地の所在によって基準は異なりますが、転用の許可基準を満たせば適法に農地を転用することができます。 |
市街化区域外の農振地域の農地 | 同じ市街化区域外の農地であっても、農振地域に指定されている農地を転用する場合は都道府県知事等の許可の前に農振除外の手続きを受けなければなりません。 |
開発行為の手続きの流れ
農地の種類によって開発行為に必要な手続きや対応窓口が異なります。また、届出から受理までの期間も異なりますので、工場・倉庫の計画地が農地の場合は早い段階で建築の専門家に相談することをお勧めします。
市街化区域内の一般の農地の手続き
都道府県知事等の許可を得ることなく農地を転用することができます。ただし、農地の転用の際にはあらかじめ農業委員会に届出が必要になります。届出の際に必要な書類は、下記の2つになります。
- 土地の位置を示す地図及び土地の登記事項証明書
- 届出に係る農地が賃貸借の目的となっている場合には、その賃貸借の解約等の都道府県知事等による許可(農地法18条1項)があったことを証する書面
生産緑地の手続き
市街化区域の中の農地を守るという趣旨から、基本的に転用することができません。ただし、買取申請をして3か月間所有権の移転が行われなかった場合は、転用などを禁止する行為制限が解除されて通常の市街化区域内の農地と同様に扱われます。買取申請に必要な条件は下記の3つになります。
- 主たる従事者が死亡した場合
- 主たる従事者が農林漁業に従事することを不可能にさせる故障をした場合
- 当該生産緑地についての生産緑地指定の告示の日から起算して三十年を経過した場合
行為制限が解除されると、市街化区域内の一般の農地と同様の手続きで開発行為が可能になります。
市街化区域外の一般の農地の手続き
市街化区域の外の範囲の農地の転用の許可を受けるには、申請書と必要な書類を備えて農業委員会を通して、都道府県知事等(都道府県知事及び指定市町村の長)へ提出する必要があります。
申請書を提出してから許可が通知されるまでの行政側の動きは、開発行為する面積によって異なります。
原則として、申請があると、申請書は農業委員会の意見を付した上で知事等に送付され、その後許可が下りる場合は、申請者へ許可の通知がされます。
申請に必要な書類と入手場所は以下の通りです。
- 定款(又は寄付行為)の写し及び法人の登記事項証明書(法人の場合のみ)
- 申請に係る土地の登記事項証明書
- 申請に係る土地の地番を表示する図面
- 転用候補地の位置及び附近の状況を示す図面
- 転用候補地に建設しようとする建物または施設の面積位置および施設間の距離を表示する図面
- 転用事業を実施するために必要な資力及び信用があることを証する書面
- 申請に係る農地を転用する行為の妨げとなる権利を有する者がある場合には、その同意があったことを証する書面
- 転用に関連して他法令の許認可等を了している場合には、その旨を証する書面
- 申請に係る農地が土地改良区の地区内にある場合には、当該土地改良区の意見書(土地改良区に意見を求めた日から30日を経過してもその意見を得られない場合には、その事由を記載した書面)
- 転用事業に関連して取水または排水につき、水利権者、漁業権者その他関係利者の同意を得ている場合には、その旨を証する書面
- その他参考となるべき書類
市街化区域外の農振地域の農地の手続き
農振地域は、正式には農業振興地域といい、諸条件を考慮して総合的に農業の振興を図ることが必要であると認められる地域について、その整備を計画的に進めていくことを目的として設けられた制度です。
農林水産大臣の定めた基本方針に基づき都道府県知事が農業振興地域を指定すると、指定を受けた市町村は、知事と協議して農業振興地域整備計画を定めます。
この計画によって農用地等として利用すべき区域(農用地区域)など、地域の農業の振興についての計画が定められます。そして、この計画が開発行為の可否に大きな影響を与えます。
農振地域の中でも農用地区域でない農地については一般の農地と同様の手続きで農地を転用することができます。一方、農業振興地域整備計画によって農用地区域に指定された農地は、原則として転用することができません。
そのため、農用地区域に指定された農地を転用する場合は農業振興地域整備計画を変更し農用地区域から当該土地を農用地区域から除外する手続きが必要になります。
農用地区域からの除外の要件は、下記の5つになります。
①農用地区域以外に代替すべき土地がないこと
②除外により、土地の農業上の効率的かつ総合的な利用に支障を及ぼすおそれがないこと
③効率的かつ安定的な農業経営を営む者に対する農地の利用の集積に支障を及ぼすおそれがないこと
④除外により農用地区域内の土地改良施設の有する機能に支障を及ぼすおそれがないこと
⑤農業基盤整備事業完了後8年を経過しているものであること
この5つの要件を満たしており、転用がやむを得ない場合は、市町村長に対し農用地利用計画の変更の申出をすることができます。